2014年度 第10回勉強会

地方創生 一極集中と極点社会

須田憲和氏(特定非営利活動法人元気な日本をつくる会組織運営本部)


 2月6日、オリンピックセンターにて「一極集中と極点社会」というテーマのもと、特定非営利活動法人元気な日本をつくる会・組織運営本部の須田憲和氏をお招きし、勉強会を行いました。

元気な日本をつくる会について


 須田氏は大学卒業後、証券会社に約10年間勤めた後、情報通信を経営に活かすコンサルタントの会社に転職された。そこでは企業の経営コンサルの仕事を行い、そこでの経験も地方創生に関連する現在の仕事に役に立ったそうだ。日本の自治体は多くの問題を抱えているが、民間の知恵やスキルを地方行政施策に入れていき、地方を活性化する活動を当会は行われているという。

 須田氏は「地域の中に入って、「地元の人と共に一緒に、まちを活性化することを心がけており、地域を分析して、首長の公言と現状とのギャップを埋める提案をするなどして、地域をコンサルタントしている。また若手の議員へのレクチャー、地域の協議会作成支援、地域活性化の拠点となる道の駅にも新たな視点からの提言をしている」と自身の取り組み内容について話された。

 次に現地視察(新潟県佐渡市)の事例を挙げられた。須田氏は理論派ではなくて現場命、現場にこそ全ての真があると考えられている。調査事業の事例としては、バイオマス発電と産業創出(宮城県)を挙げられた。また、現場に行けばほとんどのことは分かるため、まずは現場に行き、そこにいる人と直接、話をするそうだ。「しかし、地方の人は、なかなか都会の人を受け入れがたい現状もある。ここには、地方特有の心理状況として、「知らない」→「誤解」→「不安」→「拒否」のサイクルがあることも否めない」と指摘された。   

地方創生に関わる日本の現状分析について


 須田氏は「何をするにも現状分析が大切である」と語られた。年間10万人が東京に住民票を移しており、慶應の学生の合格者のデータを分析しても東京圏出身が全体の約7割、地方出身が全体の約3割であり、この約3割の人々が東京に出てきているのである。また、大学進学時と就職時に東京への転入者が増加するが、東京は出生率が一番低いため、いずれにせよ人口が減少する構図に陥っているそうだ。出生率の低下の原因としては晩婚化、未婚化が挙げられる。また、非正規雇用者の給料は正規雇用者に比べて低いことから、若年層における非正規雇用者の多さも婚姻率や出生率の低下に関係している一因であるという。また「女性特有のライフステージの影響で、働きたいのに働けない女性も多く、女性の働く仕組みづくり、あるいは環境づくりをしている会社を表彰するなど、女性が活躍できる環境づくりを啓蒙する必要がある」と話された。    

現状の政策および推進組織体制の課題


 現在、全国の自治体の数は1765であるが、平成の大合併などにより自治体の数は減ってきている。合併の弊害として、コミュニティが減少したことによる活力低下も否めない。また、現存の行政施策についての問題点としては、制度ごとの「縦割り」構造、地域特性を考慮しない「全国一律」の手法、効果検証を伴わない「バラマキ」、地域に浸透しない「表面的」な施策、「短期的」な成果を求める施策の5つを挙げられた。地域活性化を推進するためには、自治体自身の抱える各種問題の解決を図る必要がある。須田氏は良い組織作りのキーワードとして「人を巻き込む力」、「仲間」の2つを挙げられた。人を巻き込み、仲間を作ること、そして小さな成功の積み重ねによるモチベーション維持が、地域活性化のポイントであるという。

地方創生のポイント


 現状分析を受けて、昨年「まち・ひと・しごと創生本部」が設立された。これは東京一極集中を改是し、若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現し、地域の特性に即して地域課題を解決し、自立を目指したものである。「まち・ひと・しごとの創生には同時かつ一体的に取り組むこと及び全員が危機感をもって取り組むことが必要だ」と須田氏は指摘された。

次世代を担う君たちへメッセージ


 「まず、何事も経験することが大切であり、現場命、現場にこそ真の気づきがあるのである。そして、やり遂げたいという気持ちや熱い思いは必ず人を動かすことができるし、選択と集中によって深い経験と知見を身に着ければ、いつでも取組みを拡大することができる。難題にぶち当たったとしても、細くてもいいから継続こそが信頼と成果を勝ちうるのである。一方、事業のあり方を考えた場合、「社会性」→「独自性」→「経済性」という順番を間違えてはいけない。また、謙虚な心で人と接すると、人や知恵を呼び込むことにつながる。」

所感


 私は地方出身のため地方創生がとても身近な問題に感じられた。地方自治体は民間と違い、(慣習、目的、リソース)、先進的な取組みをしづらい環境にあることも確かだが、チャレンジしなければ何も進まないし変わらない。地方活性化のために私たち若者が問題意識を持ち、積極的に行動を起こしていくべきだと感じた。

 

文責 齋藤真那子