2015年度 夏合宿

全学全遊〜二兎を追う者だけが二兎を得る〜


 9月17日から19日にかけて、山梨県足和田ホテルにて夏合宿を行いました。合宿では、現在の日本社会において問題となっている事柄について、仮説・検証を行い、発表を行いました。

1日目


 9月17日には個人課題の発表を行いました。発表されたものの中から、いくつかの概要をまとめました。

 

【給食から牛乳を無くすべきである:7期、古川美紀子】

昔と異なり、普段から栄養を摂取している子供が多い日本で、本当に給食に牛乳が必要なのだろうかという疑問から、「給食から牛乳を無くすべきである」という仮説を検証しました。結論としては、牛乳はカルシウムの摂取において重要な役割を担っている点、あらゆる栄養素をバランスよく含んでいる点からみて、給食から牛乳を無くすべきではないと考えました。

 

【無料オンライン教育サービス推進は教育格差是正に有効である:7期、釋悟史】

MOOCと総称される無料オンライン教育サービスは、アメリカなど海外で広がりを見せています。そこで今回は、MOOCは、経済的・地理的要因により起こる教育格差の是正に有効かどうかを検証しました。良質な授業を提供することができれば、教育格差は小さくなる点、MOOCの学位が通常の大学に通って得られる学位と同じように認定されるモデルが日本でも成立する可能性がある点からみて、MOOCは教育格差是正に有効であると考えました。

 

【法人税の引き下げは日本経済にとってプラスである:7期、齋藤優気】

日本は平成に入ってから法人税率の引き下げを行ってきた。しかし海外に比べれば、実効税率は高いのが現状である。そこで今回は、法人税率の引き下げが産業の空洞化を防ぐ要因になるかについて考えました。法人税率を数パーセント下げたところで、企業のコストカット効果の面では、人件費の安い国に移転する方が良い点や海外企業にとって魅力が薄い点からみて、産業の空洞化は防げないと考えられました。よって「法人税率の引き下げは日本経済にとってプラスではない」という結論に至りました。

 

【宇宙開発は日本社会にとってプラスである:7期、寺尾彩子】

文部科学省を筆頭として、2786億円の予算が宇宙開発に充てられているなど、日本は宇宙開発に積極的であると言えます。「国民が便利に安心して過ごせるか」をプラスの定義として、検証を行いました。気象衛星による防災や災害時の活用、広域かつ大容量の通信、地球に関するデータ収集、研究や教育の面からみて、「宇宙開発は日本社会にとってプラスである」と考えました。ただし、膨大な予算が使われているにもかかわらず、国民が実感しにくい面については検討する必要があると感じます。

 

【少子化は待機児童問題を解決する:6期、宮田巧】

希望しても保育所に入ることのできない待機児童が、減っていないことが現在問題となっています。そこで少子化の進行が、待機児童の増減にどう関与するかについて調べることで課題を検討しました。待機児童数、保育所の数などのデータより、政府主導で規制緩和が行われるたびに、待機児童数は減少しているのに対し、年々減少している出生数とは相関関係があまりないことが分かりました。したがって、少子化と待機児童問題は結び付かないという結論に至りました。

2日目


 9月18日には、班ごとに作成したスライドを使用し、班課題の発表を行いました。発表を行った全ての班の概要を紹介します。

 

【人工知能は人間の暮らしを豊かにする:岸本班】

人工知能は機械の中で学習・推論・判断ができるものを指します。今回は、この人工知能が、人間の暮らしを豊かにするかについて検討を行いました。人工知能は教育・医療介護・家事など様々な場面で活用されています。それぞれ精神面と金銭面について豊かになるかどうか検討したところ、精神面・金銭面ともにメリットの方が多くありました。したがって、人工知能は人間の暮らしを豊かにする可能性は高いが、労働者にとっては雇用の喪失につながるため、「必ずしも人間の生活を豊かにするとは言い切れない」との結論に至りました。

 

【受験競争は日本社会にとってプラスである:小松班】

多くの人は高校受験や大学受験を経験します。その中でも、今回は大学入試における一般受験が日本社会にとってプラスかどうかについて検討を行いました。そして、「プラス」とはグローバル社会で政治的・経済的な面で優位に立つことと定義しました。経済的側面については、受験勉強だけでは創造性が鍛えられない点、政治的側面については、表現力と独創性が鍛えられない点が指摘されました。したがって、「受験競争は日本社会にとってプラスではない」という結論に至りました。


【累進課税制度は所得格差をなくし日本社会にとってプラスである:薦田班】

累進課税制度は日本において、所得税や贈与税などに導入されています。メリットとしては、富の再分配になることであるが、一方デメリットとして、経済発展の阻害になることが考えられます。そして所得格差の縮小が経済成長につながるというデータがある一方、格差縮小には社会保障による効果が大きく、累進課税の影響は小さい点が指摘されました。したがって、「累進課税制度は所得格差をなくし日本社会にプラスではない」という結論に至りました。。

 

【農協の解体は日本農業の発展にプラスである:田中班】

日本の農業は現状、農家単位の収入は増加しているものの就業者数が減っているため、総生産額が増えていません。農協の役割は、営農指導事業や取引先の提供です。農協を解体することは、失敗した営農指導事業を改善し、新規就業者数を増やすことにつながります。しかし、安定した取引先を失う農家が出ることが懸念されます。以上2点より、「農協の解体は日本農業にとって必ずしもプラスであるとは言えない」という結論に至りました。

 

【移民政策の導入は日本社会にとってプラスである:内田班】

日本では少子高齢化が急速に進行し、それに伴い経済成長率も低い状態です。今回は、この状況を改善するために、移民を受け入れることはプラスであるかどうかを考えてみました。移民政策を導入することにより、労働者不足を解消することができ、経済成長に大きく貢献することが期待できます。しかし、不法滞在者の増加により、国内の治安が悪化することも考えられる。したがって、経済成長と治安の面を比較し、経済成長のメリットの方が大きいと考えたため、「移民政策の導入は日本社会にとってプラスである」という結論に至りました。

 

【残業の習慣は日本経済にとってプラスである:宮村班】

日本では終身雇用制度や働き方の価値観により、長時間残業(特にサービス残業)が問題となっています。今回は、この問題が日本経済にとって良いことなのかどうか考えました。また宮村班では、「日本経済にとって良いとはGDPが増加することである」と定義しました。そして残業のメリットとしては、企業の総生産高が増加する点があげられ、デメリットとしては、労働時間の増加や雇用の縮小により、消費に悪影響が出る点が指摘されました。したがって、メリットとデメリットを比較し、「残業の習慣は日本経済にとってプラスでない」という結論に至りました。

 

【農業の自由化は日本経済にとってプラスである:中山班】

近年は貿易の自由化が急速に進んでいます。その状況の中で、農業分野には安い輸入品が流入することにより、農家の生活が非常に苦しくなることが予想されます。そこで今回は、「農業の自由化が農業分野のGDPを増加させることにつながるのか」について考えてみました。発表では、スイスが農業の自由化に成功した実例として挙げられ、スイスにおいては農家数が減少したものの、農業生産額が大幅に増加したことが紹介されました。そして結論として、農業が自由化されることにより、価格競争が起こり、日本農業の大規模化が進むため、日本経済にとってプラスであることが示されました。

3日目


 最終日には、みんなで河口湖に行きました。湖のほとりでスイカ割りをしたり、シャボン玉をしたりと、各々が自由に楽しんでいました。

 今回の夏合宿の目標は「全学全遊」。Front Runnerのメンバー全員が、その目標を意識し、取り組むことができた3日間になったのではないかと思います。今回の夏合宿での学びや経験を、今後の活動に生かしていきたいと思います。

 


文責 小杉啓太、南部久翔