2016年度 第4回フィールドワーク

東京ラウンド

今後の外国人受け入れはどのようにあるべきか


 11月12日、千代田区の「JA共済ビル カンファレンスホール」にて、「東京ラウンド ~今後の外国人受け入れはどのようにあるべきか~」と題された意見交換会の会議を傍聴しました。今回は、第5回テーマ「移民政策と多文化共生」に関連し、外国人受け入れに関して、積極的に活動している民間の方々と政府関係者の意見交換会を傍聴することで、移民政策に関する重要事項について理解を深める機会となりました。

民間の方々の活動報告


 意見交換のセッションの1つ目として、外国人の受け入れに関して活動している民間の方々から政府関係者へ、活動報告が行われました。その内容は、主に2016年6月から10月にかけて全国6ヶ所で行われた、外国人受け入れに関する地域意見交換会の報告です。地域によって異なる課題が存在することが分かりました。

    

 例えば、日本の中心に位置し、全国の中で外国人人口が第5位である新宿区では、外国人約40000人のうち約15000人が留学生であるという現状があります。留学生は卒業後も日本国内で就職をし、活躍するケースがありますが、職種によっては在留資格がネックになる場合もあります。また、飲食店では留学生がアルバイトとして多く活躍していますが、在留資格上週28時間しか働けないという制限があります。

 

 一方、人口減少が進む秋田県では、米を中心とする農業や医療福祉、観光分野などで人手不足が深刻化しています。この地域は高齢化が進んでいるため、農業の働き手を見つけるのが難しくなっており、外国人への期待が高まっています。しかし、日本語が話せない外国人と地元の方とは意思疎通が図れないという課題や、現状において外国人の尊厳をあまり保護できておらず、単に労働力として捉えがちであるという課題が存在します。 このように、異なる特性を持つ地域の課題を知ることで、外国人受け入れに関して、より詳細な問題意識を持つことができました。

政策推進のためのディスカッション


 セッションの2つ目として、民間の方々の意見を受けて、政府関係者が主導となり、外国人受け入れに関する政策をより良い形にしていくため、ディスカッションが行われました。 

 

 最初に、「外国人受け入れが理念通りの形で進み、悪用等が起きないようにするため、細かい制度を整えることが重要である。」という意見が出ました。その後、外国人受け入れの必要性についての議論がなされ、具体的にそれを進めていくための提案がいくつか挙がりました。また、国民のコンセンサスを丁寧に作りあげることの重要性や、外国人を受け入れることで生じる国内産業の生産性の変化などについての意見が出ました。 ディスカッションの最後は、第5回勉強会に講師としてお越しいただいた毛受敏浩氏のお話で全体が締めくくられる形となりました。その内容を以下に記載します。

 

 「労働者不足が深刻であるため、移民政策を導入していない日本においても、外国人労働者は急増しています。もし、このまま移民政策を先送りすれば、制度が整えられていないことにより、外国人が多様な形で入国することが原因となり、国内の分断や軋轢が生じる可能性が高いと言えます。従って、移民政策は日本にとって必要なものです。しかし、移民に関するネガティブな感情やイメージが合理的な議論を妨げているのが現状です。移民という名称に代わる用語を提案するなどして、ポジティブなイメージで外国人受け入れに関する議論を進めるべきなのではないでしょうか。」 

所感


 今回の「東京ラウンド」では、多角的な観点から外国人受け入れについて学ぶことができました。実際に、専門家同士の議論を目にする機会は貴重であり、外国人受け入れに関する知識だけでなく、伝わりやすい話し方や論理の組み立て方などについても参考になることが多々ありました。また、今回の第4回フィールドワークでは、5回テーマ「移民政策と多文化共生」について理解を深めることができました。

 

文責:安藤慧