2018年度 春合宿ディベート第1戦

地方創生


 2月13日、国立オリンピック記念青少年総合センターにて、今回の春合宿の大テーマある「地方創生」について、ディベートを実施しました。

【論題】「地域事情に即した効果ある施策を行うため、政府は地方創生政策に際して地方自治体へ大幅に権限と財源を委譲し、財政措置の相当部分を地方がより自らの裁量で自由 に使えるような交付金を創設すべきである。是か非か。」


 今回のディベートで主に争点となったのは、地方創生の政策における「視点」です。否定班が示す国によって開示された従来型交付金の実績は本当に根拠として成立するのか、肯定班が示す従来型交付金制度ではカバー出来ない地域の個別的な事情を考慮すべきなのか等で議論が盛り上がりました。その他、地域間連携の必要性の有無や地方創生の意義についても議論が交わされました。以下、肯定派・否定派において挙げられた論点を紹介します。また、否定側による交付金の具体案を掲載します。 

肯定派


・創設する新型交付金は地方創生推進交付金よりも使途の自由度の高いものとし、地方自治体からの申請は要するが審査基準は大きく緩める。

・パッケージ化された従来型地方創生交付金では、特異な地域事情に対応できず効果ある施策を行えない。

・地方の独自性を生かすべく、地方が主体となって多様化した問題の解決策を模索すべき(財源は十分にあるという主張を前提として)。

・KPIでの評価を行っている従来型地方創生交付金では達成度重視の表面的政策が行われやすいのに比べ、新型の交付金は短期長期両方でより高い成果が見込める。

否定派


・従来型交付金では地域間連携が認定における努力目標とされているが、肯定班の提案する新型では連携の有無を問わないため個別化が図られ、地域事情に即した施策を行うことの障害となる。

・地方自治体の計画を国が事前に査定できない新型では不明瞭且つ不適当な政策が策定される恐れがある。

代替案


・従来型地方創生交付金の審査基準に、地域事情に即した地域間連携を加えることを代替案とする。これにより各自治体の政策形成能力向上が期待できる。

所感


 東京一極集中・少子高齢化が急速に進む現在、地方圏の抱える問題は、最早地方だけの問題ではなく国として取り組むべき重要課題となっています。このような状況下で地方創生の「主体」となるべきは、地方自治体であるのか国であるのか或いは草の根的な個人であるのか断定することは難しいと思います。しかしながら、効果のある政策を実施するにあたりそれらを先導する存在は必要となるため「主体」を定める必要性も時によって生じるでしょう。その際に忘れてはならないことは、「視点」を変えることで有効性・有益性も変わりうるということだと思います。今回のディベートでは、国の示すデータ及び個別具体的な地方問題を示すデータ双方の有効性について議論となりましたが、正しさの基準を固定していては問題を多角的に捉えることが難しくなってしまいます。より深い議論を進めるためには「視点」の位置を考慮しつつ、理想とするアフタープランにどれだけ近づけていくかを考える必要があると思います。 

文責:谷本 莉子