2016年度 夏合宿

JAPAN CHANGE プロジェクト

~2020年の東京五輪に向けて~


 9月12日から14日までの3日間、熱海の伊豆山研修センターで夏合宿が行われました。今回の夏合宿では、日本社会を改善する確実な方策やプロセスを検証することで、来たる東京五輪開催に向けて、‟よりよく”変わった日本をPRし、外国人旅行客の誘致促進と日本の成長力を発信することを目的としました。

1日目


 熱海駅に集合し、マイクロバスで宿舎に向かいました。研修センターに着くと、早速研修室へと移動し、メンバーが夏休みを使って取り組んできた個人課題の発表を行いました。優秀賞として表彰されたものを以下に掲載します。

 

【マイナス金利政策は日本経済にとってプラスである:7期、平野天】

 2016年1月に、マイナス金利政策が導入されました。市中銀行が日銀にお金を預ける分についてはマイナス金利(-0.1%)が適用され、市場にお金が回りやすくなり、消費を促すことができます。マイナス金利政策の物価押し上げ効果が未だ確認できていない点、お金が設備投資や賃上げに回されず、貯め込まれている点から、現段階において「マイナス金利政策は日本経済にとってプラスであるとは言えない」と結論付けました。

 

【センター試験の廃止は日本の教育にとってプラスである:7期、安藤慧】

 文部科学省は、2020年度入試よりセンター試験を廃止し、受験生を総合的に評価するために、大学入学希望者学力評価テストを実施します。大学入学希望者学力評価テストは、センター試験・一般入試の要素とAO・推薦入試の両方の要素を有しています。そのため、センター試験では図ることが難しかった「思考力」「表現力」「判断力」に重点を置き、心身ともに健康な国民を育む教育が施されるようになると考えられます。以上の検証から、「センター試験の廃止は日本の教育にとってプラスである」という結論に至りました。

 

【地方空港の統合は、日本社会にとってプラスである:7期、小沢真緒】

 現在、日本には90の離発着可能な空港があり、4つの空港を除き、国または自治体下に置かれています。平成8年を境に、ハード面からソフト面への方針転換が行われ、国から地方空港への補助金は削減されることになりました。そこで、地方空港の統合を交通機能と集客機能の2つの側面から、地域活性化に役立つかどうかを検証しました。利用者が少なくても地域の人にとっては重要な交通手段となっている点、民営化により空港がレジャー施設やショッピングセンターとしての経済的利益を生み出しうる点から、「地方空港の統合は、日本社会にとってプラスではない」と結論付けました。

 

【貿易の自由化は日本経済にとってプラスである:8期、山崎大右】

 日本経済において、貿易分野は赤字傾向にあり、現状を改善する必要があります。貿易の自由化をTPPの発効、プラスをGDPの値が上がることと定義しました。内閣府の試算から、全体としてGDP値が上昇するだけでなく、以前よりも強固な経済が築かれるということが分かり、「貿易の自由化は日本経済にとってプラスである」という結論に至りました。しかし、福祉や医療といった経済的利益では割り切れない分野や倫理的問題を考慮して、自由化を進めていく必要がありそうです。

 

【カジノ特区の設置は日本社会にとってプラスである:8期、中野雄介】

 2020年の東京五輪開催に合わせ、カジノをはじめとした複合施設を設置し、相乗効果を狙おうという考え方が広まっています。そこで、カジノ特区を日本に導入した場合のメリットとデメリットを検証しました。メリットとしては経済的側面、デメリットとしては犯罪率やギャンブル依存症患者の増加が挙げられました。総合的な判断の結果、「カジノ特区の設置は日本社会にとってプラスである」という結論に至りました。

2日目


 朝食後、研修室に集合し、各分野のミッションに対して方策立案並びに立証を行う班課題の発表を行いました。4時間という限られた時間の中での準備・発表でしたが、趣向を凝らした方策が出揃い、白熱した議論が飛び交いました。以下に、各班の発表内容を掲載します。

 

【教育格差問題を解決する方策を考案せよ:齋藤班】

 現在の日本では、経済格差や教師格差、地域格差などから生まれる教育格差が、就職に影響したり次世代にまで連鎖するという大きな問題となっています。今回は、その解決策について検討しました。経済格差の面からは、①教科書代や修学旅行費への補助金、②国公立大学の入学金一括納入ではなく、分割し授業料納入の際に上乗せする、③企業が、卒業後にその企業で働くことを前提に、授業料無料の大学を設立する、という解決策が提示されました。また、教師格差の面からは、④教師をランク付けし競争心を生み出す、さらに、双方を解決する案として、⑤ボランティア学習室に教職過程の大学生が参加することを、単位取得の必須項目にする、という解決策が提示されました。

 

【日本の貧困問題を解決する方策を考案せよ:内藤班】

 相対的貧困率(平均年収の中央値を下回る世帯の割合)という物指しを用い、全家庭の中で母子家庭の相対的貧困率が突出している現状に着目しました。その上で、父子家庭や単身女性の平均年収まで、母子家庭の平均年収を引き上げることをミッションとして定義しました。問題解決の方策として、母子家庭の女性10人による株式会社FrontMotherの立ち上げを行います。母子家庭のシングルマザーにしかできない新しい働き方を実践する広告塔となり、母子家庭の実情を広く社会に発信していくことで、母子家庭の労働・生活面が改善されると考えました。

 

【財政問題を解決する方策を考案せよ:大嶋班】

 現在、日本の歳入の6割を税収4割を公債が占めていますが、生産年齢人口の減少に伴い税収が減少すると考えられています。また、歳出においては、高齢者の増加に伴って社会保障費が肥大化しています。このような財政問題を解決するため、大嶋班は2036年までに赤字国債をゼロにすることをミッションとし、歳入と歳出の見直しを行います。歳入の見直しとして、既存の法人税にプラスして、企業の内部留保に平均1.25の利率を上乗せする新法人税制度を提案します。また、歳出の見直しとして、①年金受給年齢を65歳から68歳まで引き上げること②失業保険を減額するという解決策が提示されました。 

 

【若者の政治的関心を高める方策を考案せよ:宮田班】

 参政権が18歳に引き下げられ、若者の政治的関心に注目が集まっています。宮田班は政治的関心の度合いを象徴する存在として、選挙の投票率を取り上げ、その投票率をどのように上げれば良いかを考えました。今回は影響が顕著に出やすいという理由から、市議会議員選挙の投票率に限定しました。宮田班が提案するのは、実際の議員の仕事をゲーム上で体験できる「体験型スマホゲームの導入」です。若者におけるスマートフォンの普及率やスマホゲームの有効性を考慮し、さらには、ゲームの利用頻度によって実生活でその恩恵を受けられるようにするなど、若者に寄り添った方策が提示されました。

 

【訪日観光客を増加させる方策を考案せよ: 池田班】

 2015年に海外旅行をした中国人は1.2億人であるにも関わらず、訪日観光客は全体のわずか4%にあたる499万人であるというデータをもとに、「訪日中国人観光客を2017年までに1500万人に増加させる」方策を考えました。情報統制が厳しい中国国内では、TwitterやFacebookなどのSNSの使用が禁じられています。中国独自のSNS文化が、日本の情報が中国国内へ伝わるのを妨げる要因であると考え、中国独自のSNSと日本で広く使われているSNSの連携を日本政府が主体となって推し進めることを方策としました。このことにより、日本の観光地以外の情報や日本人しか知らない穴場の情報を豊富、かつ、安定的に中国へ提供できます。

 

【ビックデータを活用して医療福祉問題を解決する方策:南部班】

 医療福祉に関して、現在の日本では赤字国債、高齢化、過度な薬剤投与など様々な問題が生じています。その中でも財政問題を解決する方策として、南部班は「医療番号制度」を考案しました。この制度では、プライバシー保護のため匿名で管理された個人の医療データを一括管理し、創薬等開発における効率化を図ります。加えて、現行のマイナンバー制度と連動させることにより、患者自身が自己の医療経歴を診察に活かすことが可能となります。開発・診察業務の効率化が人件費削減に繋がり、医療福祉における財政問題が緩和されるという方策です。

 

【日本の食料自給率を100%にするための方策:中井班】

 日本の農業は衰退傾向にあり、食料自給率は生産額ベースで66%というのが現状です。今回は、日本の食料自給率を100%にするために、政府が何を行うべきかを考えました。飲食費の最終消費額の8割を占めていること、国産品のニーズが近年増加傾向にあることから、外食産業・加工品に着目しました。方策としては、レストランや食品加工業者などの大口消費者と生産者を直接結びつける、プラットホームの設立を提案しました。このことによって、大口消費者と生産者同士の取り引きを活発にし、外食産業・加工品において国産品を消費する割合を高めることができると考えました。

 

【人口減少に歯止めをかける方策を考案せよ:三戸班】

 日本では2000年頃より人口減少が進行しています。人口減少は市場規模の縮小や生産力の低下を及ぼし国力を低下させます。こうした現状の中で、夫婦が出産を躊躇する理由として最も多くを占めたのが、教育費や養育費といった経済的な理由でした。そこで三戸班では、教育費の経済的負担軽減を目的として、教育保険システムという教育費の公的助成制度の構築を提言し、大学教育費におけるセーフティネットの形成を目指しました。この政策は、一人当たりの負担額が小さく財源の確保が容易であるため実現可能性が高いものの、有効性に関しては養育費を考慮に入れていないという理由で疑問視する意見も挙げられました。

3日目


 とうとう夏合宿も最終日となりました。二日間個人課題や班課題に真剣に取り組んだ後は、夏休みを締めくくるFR恒例の海企画!!しかし、てるてる坊主の願掛けも叶わず、雨が降ってしまい、海に行くことはできませんでした。そこで、悪天候を吹き飛ばすべく、室内レクとスイカ割りが行われました。各期の垣根を越えて、笑いの絶えない楽しい一時を過ごすことができました。

 

 三日間の個人課題や班課題、宴会や室内レクを通して、「よく学び、よく遊ぶ」半学半遊という夏合宿のテーマを達成できたことと思います。普段は会うことのできない期が顔を合わせ、心を通わせることで、後期への弾みをつけることができました。

文責 宮寺ひとみ