2011年度 第4回事前学習

女性の社会進出


 最近日本では女性の社会進出を促進しようという動きが活発化しています。 

 そこで、今回の事前学習ではケーススタディーという形をとり女性の社会進出が民官どちらの手にゆだねられるべきなのかを話し合いました。企業が就業環境を整えるべきなのでしょうか?それとも政府が女性支援策を充実させるべきなのでしょうか?

女性の社会進出は必要か?


 今回まず議論になったのは女性が社会進出することの長所と短所でした。

反対派の意見には、

・女性が社会進出することの長所が分からない

・女性が社会進出をしてしまうと子育てをして家庭を守る人がいなくなるまた、しつけや食育の機会が減少するが挙がり、それに対して賛成派の意見は

・女性でも優秀な人材がいるのだから、それを活かすべき

・女性の教育にも税金は使われているから将来は納税者となってもらいたい

・少子化による労働力不足の解消につながる

というものでした。 

今回は女性の社会進出が必要だという考えを根底に議論を進めていきます。


なぜ女性の労働参加率は低いのか?


 国際的に比較すると圧倒的に女性の労働参加率が低い日本。この現状が改善されるべき問題であることは今分かったので、次にその原因は企業と政府のどちらにあるのかを話し合いました。 


 企業の取り組みに原因があるとする意見には、

・政府の政策には限界があるから、結局は企業の柔軟性が問題

・実際に行動に移すのは企業だから企業が頑張るべきというものが挙がったのに対し、政府に責任があるとする主張には・日本全体に見られる男尊女卑の風潮がまず問題で、それを解決できるのは政府

・大企業と違って経済的に余裕のない中小企業は政府の強制がないと行動できないというものが出ました。 

 つまり、どこまで政府の強制力が及びどこから企業の自主性に委ねるべきかが論点となっていて、最終的には企業と政府の両方がそれぞれの立場から取り組むべき問題であるという結論に至りました。 


 なおここで、女性の社会進出の最大の足かせになっているのはやはり、女性が出産・育児によって休職、あるいは退職してしまうことが多いからであろうという意見が出ました。第一子を出産した女性の実に6割が退職してしまうのです。 これを踏まえて次の議論に移ります。


女性の社会進出促進のために民官はそれぞれ何をするべきか?


 最後の問いは現状に対する改善策です。

まず企業にできることは、

・自由出社制(注1)

・中途採用(注2)

・在宅勤務制(注3)

・残業を減らすための制度(注4)

といった制度の導入が提案されました。主に女性が出産・育児を乗り越えるための支援策です。

 

対する政府の対応に挙がったのは

・育児施設の増設(注5)

・出産・育児を行う女性の労働時間を制限する制度の導入(注6)

・クォータ制

でした。

 

 クォータ制とは各企業の労働力の4割以上を女性にするという制度で、その導入の是非についてはさらに議論が展開されました。 賛成派の意見に、「企業の管理職に占める女性の比率も低い日本においてクォータ制は特に効果的である」というものが出たのに対し、反対派の意見では「企業の扱う職種によっては男性の方が戦力になりやすい場合もあり強制することは適切ではない」というものと、「女性の能力が高ければ、自然と女性の雇用機会が増えるのでこのような制度をわざわざ導入しなくても労働力に占める比率は改善される」というものの2つが出ました。

 

 また、企業や政府という枠組みを超えた提案もあり、出産・育児を経て職場に復帰できなくなってしまった女性はベビーシッターとして新たな職を得ればよいのではないか。そうすれば育児のために退職する女性が減るのではないか。という意見が出ました。議論の余地はありますが、斬新で将来性のあるアイデアでした。


まとめ


このように今回の事前学習では企業や政府の今後の取り組み方を議論してきましたが、本来は利潤追求が目的の企業に対し政府が口出しをすることが果たして妥当なのかという疑問も残ります。とにかく、企業と政府、どちらかに原因があるということはなく、その両方が女性の社会進出を促進するために積極的に取り組むべきではないでしょうか。この議論を踏まえて、次回の講義に臨みたいですね。

 

 

※注釈の解説

(1)自由出社制:社員が自分の都合に合わせて出社時刻と退社時刻を決められる制度で、その延長で短時間勤務制度、カンガルースタッフ制度、に代表される正社員のパートタイム制を出産・育児に臨む女性に適用するという提案がなされました。

(2)中途採用:出産を終えても復帰できずに退職してしまった、能力のある女性を企業が中途採用すれば女性の社会進出に効果的だろうという意見です。

(3)在宅勤務制:Skypeやemailの発達した現代、家にいながらにして職場に接続し仕事と関わり続けることでブランクが空くことを避けられるという制度です。

(4)残業を減らす制度:男女共に残業が当たり前の日本ですが、これを減らすことができれば在宅時間が長くなりその分夫婦が協力し合いながら出産・育児を乗り超えることができます。

(5)育児施設の増設:特にオフィス街や企業内に育児施設を設けることで女性が安心して出社できるようになります。ただし、車で出勤するのが一般的な欧米に比べ、電車出勤が多い日本では、子供をオフィス街まで連れてこられるのかという現実的な問題が残ります。

(6)出産・育児を行う女性の労働時間を制限する制度の導入:出産・育児を行う女性の労働時間に制限を設ければ女性が休職・退職せずに済むのではないかという提案です。ただ、与えられる仕事量が変わらなければそれまで以上に大変になってしまいかねないという危険もあります。