2013年度 第9回勉強会

人口減少社会 ―新しいワークスタイル―

吉永隆一氏(株式会社パソナテック代表取締役社長)


 2月4日、オリンピックセンターにて「人口減少下における新しい働き方」というテーマのもと、総合人材サービスのパソナグループでIT・エンジニアリング領域における事業を展開する株式会社パソナテック代表取締役社長の吉永隆一氏をお招きし、勉強会を行いました。


今後の日本


 これから日本は人口が長期的に減少していく局面に突入する、と吉永氏は述べられた。成長戦略が不発の場合、就業者数は最悪820万人減ることも考えられるそうだ。このような状況で、私たちはどう対応すればいいのだろうか。鍵となるのは女性・シニア・若者の活用、および新しいワークスタイルの創出であるとのことだ。   

 

 女性・シニア・若者の活用 人を活かす、という理念をベースに「創職」を行ってきたパソナグループは、これまで様々な女性やシニア、若者の活躍の支援を行われてきたという。 たとえば女性については、女性活躍を主眼に据えた人材派遣システムの確立、企業内保育所の企画立案・設置推進、育児や介護などで通勤が困難な方々に向けた在宅就業支援などを展開されてきた。また、パソナテックでは自社の復職制度も充実させており、産休・育休後の女性の復職率はほぼ100%との事である。  


 シニア世代の支援についても、大企業でキャリアを積んだベテラン人材と経験豊富な人材を必要としている中小企業やアーリーステージの企業をマッチングするサービスなどを行われているそうだ。 さらに若年層を対象にした取り組みとしては、シャッター商店街や農業の担い手不足といった地方問題の解決のために自治体をプロデュースする事業を行っており、就職難に苦しむ若者に活躍の場を提供することも、その過程で併せて実施されていると吉永氏は説明された。


新しいワークスタイル


 柔軟で多様な働き方を推進する安倍政権発足後、様々な法改正によって働き方がこれまで以上に多様になった。さらに90年代から続く通信インフラの発達と相まって、全く新しい「クラウドソーシング」や「テレワーク(在宅ワーク)」というワークスタイルが可能になりつつある、と吉永氏は続けられた。


クラウドソーシング


 クラウドソーシングとは、ネットを介して群衆(クラウド)に業務委託(ソーシング)をする仕組みだ。クラウドソーシングサイト内には多数のクライアント(発注者)が業務依頼を投稿しており、ワーカー(受注者)はその中から自分のスキルを活かせる業務に応募をする。双方が合意に至れば受発注が成約し業務を遂行して報酬を得ることができるのだ。  


 一連のプロセスで特に優れているのは、クライアントとワーカーのマッチングにおいてサイト側は人手を費やさなくていい点だという。これにより色々な契約が低コストで自動的に進行していくのだそうだ。    


 続いて吉永氏はパソナテックの運営するクラウドソーシングサイト「Job-Hub」での事例を挙げられた。ある企業がJob-Hub上で、自社の製品をテーマにしたスマートフォン向けのアプリ開発のキャンペーンを実施した。その時、Job-Hubを介したアイデアの募集対象は30万人、アプリの開発が可能な対象は500人。世界中の人が母集団となりたくさんのアイデアを募ることができるのも、クラウドソーシングサービスの利点だ。募集・選考を全てオンラインで実施できたため、圧倒的なスピードとコスト削減につながったとの事である。 クラウドソーシング市場は今後も大きく成長することが見込まれ、人口減少社会では様々な形で人手不足解消のために人材を担保していくと思われる、と述べられた。


テレワーク


 ここ最近のITの発達によって、場所や時間にとらわれない「テレワーク」ができるようになった。パソナテックはマイクロソフトと提携して職場環境のクラウド化を進められている。これは、パソナグループの社員や登録スタッフにタブレットPCやOffice365(クラウドサービス)アカウントを支給し、家・職場・外出先のいずれにおいても同一の環境を提供することでワークスタイル変革を推進する、というものだ。現在テスト導入が行われているという。また、在宅ワーク支援センターを設置し、地域の雇用創出や案件誘致などにも取り組んでいる。


これからの時代に求められること


 続いて吉永氏は、IT化が進んだことで企業の社員は型通りの仕事をするだけでは務まらない時代になった、と説明された。なぜならクラウドソーシングがあれば、同じ仕事をより安い報酬で引き受けてくれる人材が見つかるからである。企業の社員に求められているのは、付加価値のある仕事をしてクラウドで見つかる人材と差別化をすることだそうだ。 


 また同様に、企業に求められることも変わりつつあるとのことだ。自社のコアとなる事業に社員を戦略的に配置し、その他の部門は効率化・アウトソーシングを積極的に行って生産性向上を実現することがグローバル競争において急務なのだ。


雇用・働き方先進国日本


 従来の「決められた場所(会社)で・決められた時間に・決められた仕事をする」という働き方に代わって、これからは「好きな場所で・好きな時間に・好きな仕事をする」というワークスタイルが主流になるそうだ。  


 クラウドソーシングの描く未来では、何歳になっても人は専門性を活かして、いくつものプロジェクトに関わることができる。海外や地域住民とのコラボレーションも増え、個人と企業は対等な存在となっていくだろう。  


 ともに「経済先進国」、そして「雇用・はたらき方先進国、日本」を目指しましょう、と吉永氏はまとめられた。


質疑応答


Q1. クラウドソーシングにおいて、クライアントとワーカーが直接会わないことはトラブルにつながらないか?

A1. クライアント側が自身の業務を正しく把握したうえで、切り出す業務を明確化してワーカーに発注することが重要。このような発注スキルはコストに影響するので、今後は会社の業績はこれができるかできないかで大きく差がつくだろう。当社の「Job-Hub」は、人材会社が運営している利点としてマッチング支援をする仲介者「仲人」が存在する「仲人型クラウドソーシング」としてサービスを提供している。


Q2. クラウドなどの環境が整備されつつあるなか、私たちは何をすればいいのか?

A2. 通勤中でもスマートフォンでニュースを見たりメールチェックができる等、ITの進化によっていつでもどこでも情報をインプットできる環境が実現している。ツールを有効活用して積極的に情報を吸収し、知識として身につけて欲しい。仕事をしていく中には積極的に情報収集して勉強し、それを仕事に活かしながらがむしゃらに働く時期も必要。仕事においては、初めは与えられたことに対してきちんと結果をだし、次にやり方を工夫したり方法自体を変えてみることで生産性向上の努力をする。


Q3. フリーランスの働き方は魅力的だが、どうすれば安定収入を得られるのか?

A3. 一概に言うことはできないが、何らかの強みを持っていること、自分に厳しいこと、発信力があること、向学心があることなどが重要。フリーだけで生活できる人はごく少数で、大半の人は副業的に活用しているのが現状。仲間も叱ってくれる人もいない状況で上記の資質がなければ早晩挫折してしまうだろう。


所感


 「高度成長期の頃から女性の復職支援をおこなってきた」など、文字通りのパイオニア精神に感銘をうける講義でした。また、これまで取り組まれてきた数多くの事業を幅広く紹介してくださったため、終始興味のつきることはありませんでした。


 ご講演いただきました吉永隆一様、本当にありがとうございました。


文責:東恩納 麻州