2015年度 第9回リフレクション

一億総活躍社会 ~子育て支援~

論題「希望出生率1.8を実現するために、国はどのような施策をとるべきか。」


立論


希望出生率とは、結婚して子供が欲しいと願った人の希望がすべてかなう出生率のことである。一国の人口安定に必要な出生率は2.1といわれているが、2014年現在、日本の合計特殊出生率は1.42である。中・長期的な視点に立って、人口減少を根本的に解決するために、どのような手段を取るべきかが今回の課題となる。

 

大嶋班:まず、20代での結婚を推し進めるために、男女ともに20代で結婚するカップルには①住宅補助②所得税の軽減③耐久消費財購入給付金を給付する。次に、結婚した後の第二子を産みやすい環境づくりのために、①第二子以降の出産祝い金給付②子供の数に応じて納税額を段階的に引き下げることを提案する。さらに、結婚後の子育て環境を改善するために、公共機関にベビーカーの設置義務化の推進や出産後78週の有給の育児休暇として認める等の安全性、利便性の側面や経済的な側面での支援を行うことを提案する。

 

齋藤班:希望出生率1.8の実現に向けて、事実婚推進政策を提案する。日本の現状では、出生率が1.42と低迷しており、晩婚化、未婚化がその背景となっていることが窺える。そこで、事実婚届を提出したカップルを事実婚と認定し、法律結婚した夫婦と同様の法律上の優遇措置を講ずる。スウェーデンのサムボ法¹のように結婚せずに同棲するカップルを保護する。これにより、「家」だけでなく個人を尊重する考え方が広まり、法律婚していないカップルにも子供をもうけるという選択肢が与えられるため、夫婦共同での育児を支援する雰囲気が醸成され、男性の育児休暇取得率が向上すると考えられる。既存の育児休業制度を活用しつつ、事実婚という新たな制度を導入することで、制度面から希望出生率1.8%の実現を目指す。※¹サムボとは、結婚せずに同棲するカップルのことを指す。

反駁


大嶋班から齋藤班へ次のような反駁がなされた。

 

夫婦別姓によって、むしろ親としての責任意識が不明確になるのではないか。結婚していない男性の育児休暇は不確実性を含んでおり、実現性に欠けるのではないか。結婚の制度面だけを整えても、カップルが子を持たない選択肢もありうるため、希望出生率1.8の実現は難しいのではないか。男性の育児休暇取得が難しいのは、職場の理解の無さというよりも、社会環境が整っていないことによるものではないか。

 

齋藤班から大嶋班に対して次のような反駁がなされた。 

 

夫の育休が取得しやすくなることで、第二子以降を出産しやすい環境が作られる。補助金に頼ることは財政面から限界があり、また、有効性にも欠けるのではないか。20代カップルに対し減税をおこなったところで、結婚を促進させることはできない。

最終弁論


大嶋班:男性の育児休暇に対する社会の理解の無さは、事実婚を推進したところで解消されるものではない。事実婚については、スウェーデンのサムボ法をそのまま日本に当てはめることには、社会的環境の違いから、実現は困難である。住宅補助や所得税減税といった直接的な支援を行う方が有効である。

 

齋藤班:補助金に頼ることには限界がある。量が少なければ有効性に欠け、逆に多ければ財源の面で実現性に欠ける。事実婚は日本の伝統的価値観にはそぐわないが、日本社会の根底にある伝統を、根本的に変えていくことが出生率向上には必要不可欠である。法的に結婚する前に事実婚という段階を設けることで、結婚に対する意識のハードルが下がり、未婚や晩婚を解消することが可能となる。

所感

今回のディベートでは、中・長期的な視点に立って「希望出生率1.8%」を達成できるかどうかを有効性、論理性、実現性の観点から審判の方々に評価していただきました。結果は政策の有効性、論理性では大嶋班、実現性では齋藤班というように審判の評価が分かれ、勝敗は付きませんでした。一時的に問題を解決できれば良いのではなく、今後も機能していくような政策を生み出すことが、今回求められていたのではないかと感じました。         

 

                                       文責 鍋田 真結子