2011年度 第3回リフレクション

女性の社会進出


 11月11日の定例会では、日本のこれから~女性の働き方~のリフレクションを行いました。今まではリフレクションとして、ディスカッションを行っていましたが、今回から新たにディベートを採用することになりました。

 

 ルールは、ディベート甲子園のものを参考にしながら、定例会の時間内で終えられるよう調節したうえで、FR Debate Rule Bookを作成しました。1チームを4、5人とし、立論・質疑・第一反駁・第二反駁(記録係)で構成します。よって、全8チームにより計4回の試合が行われました。各試合に、2年生が1名ずつジャッジとして付き、最後に講評を述べ勝敗を決定しました。以下が、各試合の講評です。

 

論題

「クオータ制を一部上場企業に導入し、2020年までに取締役会の役員は、双方の性がそれぞれ40%以上であることを法制化する。」


第1試合


<総合評価>

 「肯定側」の勝ちとする


<講評>

 全体的に即興ディベートであったにも関わらず、論点が簡潔に述べられており、また全員が主体的に関わっていてとても良かった。反駁もきちんとまとめて話せていて、まるで準備してきたディベートのようだった。とてもレベルの高いディベートで見ていて楽しかった。

 

<立論構成>

 肯定側は立論において、①男女の不平等是正②視点の多様化③労働力の補填の3点をメリットとして挙げた。一方否定側は立論において、①個人の能力より性別が優先されてしまう②逆差別の発生③ジェンダー論の観点から時代の流れに逆行してしまうという3点をデメリットとして示した。


<両者の立論に関して>

 肯定側は多角的な観点からメリットを挙げており、非常に有効であった。しかし、②を示したものの、根拠が本来のメリットである「視点の多様化」とはずれていたため、②のメリットは論証されたとは考えづらかった。視点の多様化というメリットに的確な根拠を示すか、根拠から考え的確な言葉でメリットを示すかのどちらかを取ればより良かったと考えられる。今回は根拠がきちんとしていたため、根拠をメリットとし、その例示を行って論証すればより良かったのではないかと思う。一方、否定側の立論は①②のメリットが①を原因とし、その結果として②が発生すると考えられるのでメリット①②はまとめ、他のメリットを1つ加えた方がより効果的だったと考えられる。


<両者の質疑に関して>

 両者共に質疑がないということがなく、とても良かった。質疑の回答もみなきちんと答えられており、とても良かった。ただ、質疑を振られたときは論拠がなくとも「ない」と答えるよりは詳細なデータがなくても何かしら回答できると良い。


<両者の反駁に関して>

 否定側の第一反駁はとても良かった。全てのメリットに対して確実に反駁し、肯定側の論証の甘い部分を上手く突いた形となっていた。一方、肯定側の第一反駁もとても良かったが繰り返しが多い気がした。それにより、否定側の反駁に対して反駁できていないところがあった。そのため、的確に全ての反駁に反駁できていればなお良かった。ただ否定側反駁に対する反駁は的確なものであった。

 否定側の第二反駁では、今回のディベートは新規雇用ではなく役員登用に対してのものであり、新規雇用は関係ない」という肯定側の第一反駁に対し、「役員の女性を増やすためには女性の雇用を増やす必要がある」と反駁した。論理は通っているが、もう少し説明があると良かったと個人的には感じた。また、肯定側の反駁に答えられていないものもあったので、そこを何かしら言って反駁できればより良かったと思う。肯定側の第二反駁は否定側の反駁に対し、的確に反駁できていてとても良かった。両者共に第二反駁の最後にはきちんとメリットデメリットのまとめが簡潔かつ的確にされており、とても分かりやすかった。


<最後に>

 論理的かつしっかりとディベートを行っていて両者共に良かったが、結果として肯定側のメリットが否定側のデメリットより上回ったため、肯定側の勝利とする。


第2試合


<肯定側の立論>

①男女平等を満たすために必要。憲法24条に反している

②価値観が多様化し、企業の発展につながる

③労働環境が改善し、子供を産みやすくなり少子化に歯止めがかかる


<否定側の立論>

①2020年までの8年間では、人材育成は無理である

②企業内の男女比率がもともと異なっていた場合、競争率に差が生じ、平等に反する。

(例、全体で100人の企業。男性60人、女性40人の場合)


<否定側の反駁>

・女性の価値観を取り入れるには40%に近づけなくてもよいのではないか

・労働環境の改善にならない

・出生率に関しては北欧の例に過ぎず、日本に当てはまるのか

・男性向けの会社と女性向きの会社がある


<肯定側の反駁>

・ノルウェーは2008年、4割に上げた時、利益率16%アップした。やる価値あり・女性の非正規雇用者が35%。能力がある人が入れない現状。女性役員の比率を上げ、採択時のマイノリティにならないようにする

・アメリカ・イギリスなど他国の例もある

・女性が社会復帰しやすくなり、出生率が上がる


<判定>

 肯定側の勝利男女平等のことについては、どちらの考えも理解できるため、引き分けとしました。(根底に男女差別が生じているため、それを改善するとも考えられるし、企業内での逆差別につながるとも考えられる)女性の価値観を取り入れるという点では、否定側の意見にもうなずけましたが、ノルウェーのデータを根拠として利益率が上がるとした肯定側に説得力があり、肯定側を支持しました。女性が社会復帰しやすくなり出生率が上がるということも大きなメリットとして考慮しました。


 ただ肯定側は、否定側の立論①の人材育成について触れていなかったのが残念であり、マイナスでした。以上のことから、どちらも合点がいくところがあり接戦でしたが、根拠のあるデータを用いた肯定側に説得力があり、僅差で肯定側の勝利とさせていただきました。双方とも第二反駁でまとめることはできたものの、時間を上手く使えていないように感じました。そこを次回改善することができれば、さらに素晴らしいディベートになると思います。


第3試合


<肯定側立論>

・出生率増加 

…女性の管理職増加に伴う男性育休取得者の増加←具体的データとして、男性の育休取得率増加に比例する形で女性の出生率も増加

・女性労働力の増加 

…上層部を変えることで女性雇用を増やす

→税収アップ

…移民受け入れしなくてもよくなる(労働力の確保)

←移民を受け入れることでのリスク(移民によって治安悪化)を回避できる。

・価値観の多様化 

…女性目線を(一般職ではなく)会社経営にとりいれる


<否定側立論>

・健全な経営

…能力よりも性を優先していると効率的な経営が成り立たない

・逆性差別

…男性への差別

・十分な制度 

…社会保障が十分である、という前提のもとつくられた制度

←日本は財政状況的に社会保障の充実は現在無理

⇒少子化対策の足かせになるのではないか社会保障の充実により少子化の改善を図る方が先決


<第一・第二反駁>

・社会保障との兼ね合い 

…社会保障を先に行うのが前提だ、という意見と社会保障を先に行うのはクオータ制を否定することにはならない、という意見

・移民と治安悪化の相関関係 

…現在の労働力の減少、という事態を回避する方法は移民か女性の社会進出か


<判定 >

肯定側の勝利

議論の中心の二つ目、「移民と治安悪化の相関関係」はクオータ制導入の是非とは本質的に異なる議論だ、と判断できたため、採点する上で比重を重くすることはなかった。その上で、議論の一つ目は肯定側が否定側を論破していたため。立論はともに時間のない中、素晴らしいものを用意できたと思う。


総括


 用意された時間が無い中でも、立論がよくたてられていると感じることが多かった印象があります。ただし、時間の配分がうまくいかなかったり、相手の発言をうまく活かせなかったり、話題がそれてしまったりといった場面も見かけました。しかし、短時間の中でお互いの意見を集中して聞くことができ、とても有意義でした。


 次回では、そのような反省点を活かし、より質の高いディベートにしたいと思います。