2010年度 第10回勉強会

ビッグイシューの活動を通して考える

長崎友絵氏(ビッグイシュー日本・販売サポート)


 私たちFrontRunnerは昨年12月、有限会社ビッグイシュー日本の長崎友絵様より「ビッグイシューの活動を通じて考える」と題したご講演をいただいた。

 

 高校生の頃に初めてホームレスを目撃し、「どうして屋根もないところで生活してるんだろう」と心にひっかかったという自身の経験談から語り始めた長崎さん。

 

 講演では、汚い、怠け者、お金もないというホームレスへのイメージを問いかけ、実際のところは皆がそうではないのだと語った。 アンケートに答える仕事や家電量販店のオープンセールに代理で並ぶバイトをしたりと、働く意思のある人も少なくないという。そんな話から、ホームレスの実態や原因、他にもビッグイシュー創設の歴史などについても詳しく話してもらった。

 

 現在ビッグイシューではホームレスの人たちに自発的に登録販売者として登録、雑誌を仕入れてもらい、300円で街頭販売する。というビジネス手法を取っている。「ホームレスはあくまでビジネスパートナー。しかしだからといって来てくれる者は基本的には拒まない。ビッグイシューは一方的に<助ける>組織にはなりたくない。対等な関係でありつづけることが基本。」と、ホームレスを特別視するようなことは一切しないということだった。

 

 また、長崎さんはビッグイシューで感じたこととして、ホームレスはイメージと違って人との絆のようなものを非常に大事にしている、と語る。常連さんが一足早いクリスマスプレゼントとして暖かいセーターをくれたり、お茶の差し入れをしてくれたり。またビッグイシューを訪れるたびに登録販売者同士で仲良くなる人も多いそうだ。そんなホームレスに対して「単にビッグイシュー事業に参加して稼ぐだけでなく、その過程で得られる人と人との絆・繋がりのようなものを大事にしてほしい。」との思いを語った。

 

 「比較的おじさん世代のホームレスたちは『語るべき過去』を持っている。(講演の中では私が昔東京タワーを建てたというおじさんの話が出た。)厳しい社会環境の中にもどこか気の和らぐ部分を持っている。しかし若いホームレスたちは何もない。ただ社会に完全に絶望してしまっている。」という。 私たちの世代がこれからの日本の社会をどう変化させていくかを深く考えさせられる内容だった。



Big Issueについて

 ビッグイシューは1991年ロンドンから始まり、2003年9月に日本で創刊開始。ホームレスの自立を目的とし、仕事を提供している。NPOではなく有限会社としての企業性を持ち合わせ、「社会的企業」として社会的責任活動(CSR)を行う民間企業などと連携するなどしホームレスのための活動を日々進めている。