2015年度 第1回事前学習

スマホ社会の光と影


 4月24日、日吉キャンパスにて第1回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「スマホ社会の光と影」です。今回は宮田と中井によるファシリテーション形式で、本テーマについて日本の現状と今後の展望を考察しました。

スマホの爆発的普及


 2005年と2013年の、ローマ法王発表時のヴァチカンの写真を比較したことのある人はいるでしょうか。慎ましやかにその時を待つ人々の様子がうかがえる2005年に対し、2013年はこの歴史的な瞬間を写真に収めようと掲げられる、無数の携帯端末のバックライトがまばゆいばかりです。iPhoneは2007年、Androidは2008年の発売ですから、スマートフォンがいかに短い間に普及したかがうかがえる一枚といえます。日本では2010年から急激に広まったスマートフォンの普及スピードは、利用人口の点でインターネットのそれを凌駕しています。世界における携帯電話台数の推移を見ると2013年におけるスマートフォンのシェアは全体の63%となりフーチャーフォン(ガラケー)を上回りました。ちょうどこの勉強会の行われた4月24日には日経新聞が、国内メーカーが2017年以降ガラケーの生産を中止することを報じました。

アプリが世界を席巻?


 Google株式会社はスマートフォンの台頭から生まれた新たなビジネス領域をアプリ経済と定義しました。2011年から2013年の間に市場規模は4倍、年平均成長率は90%と目覚ましい成長を見せています。Nielsen Mobile NetViewの調査によるとスマホ利用時間の約7割はアプリ(残りの3割はWEBブラウザ)利用が占めており、一人あたり月平均27個のアプリを使用し、そのうち月に10回以上使用するものは9個であるそうです。

スマホ中心の生活


 ここでファシリテーターから「スマートフォンがここまで急速に広まった理由は?」「生活はどう変化した?」という質問が投げかけられ各テーブルで意見を出し合いました。前者については、

 

·便利だから(乗り換えNAVIやLINEがよく引き合いに出された)

·必要な機能をアプリとして取り込むシステムがいいから

·周りがみんな使っているから

 

などが挙げられ、後者については、

·外出先でも手軽に必要な情報を得られるようになり、家で調べておくといったことが減った

·ゲームにはまり、生活リズムが悪くなった

·日本語の使い方が変わった(メールよりも短い文章ばかり使うようになった。格助詞を使わなくなった)

 

などが挙げられました。

 「このアプリなしではスムーズに生活できない!このアプリを開かずに我慢しておくことは1日でもムリだ!」などという人も少なからずいて、いかにスマートフォンが私たちの生活にとって(よくも悪くも)かけがえのないものになっているかが浮き彫りになりました。そして、スマートフォン中心の社会の光と影という言葉の意味に近づいてきたように思われました。前ローマ法王ベネディクト16世は2012年1月「チャットやツイートを控え、一人、静かに考えなさい」との警告を発しています。また今年の4月には信州大学の入学式において山沢学長が「スマホやめるか、大学やめるか」と約二千の新入生に問いました。

スマートフォンの功罪


 ここで再び「スマートフォンのもたらした変化・功罪とは?」との質問が投げかけられ、以下のように主に悪い面について意見が出ました。

 

·夜更かしをすることが多くなる

·ゲームなどの課金をしすぎてしまう

·歩きスマホによる事故

·自分で考える機会が減る

 

 歩きスマホ経験者はスマートフォン保持者の約45%と言われており、そのうち約68%は衝突の経験があります。2010年以降、歩きスマホによる事故での救急搬送数は増加しており、駅での事故が全体の4分の1を占めます。SNSにストレスを感じる人がいる一方で、SNSゲームに依存してしまう人もおり「SNS疲れ」「デジタルヘロイン」という言葉も存在します。就寝前にスマホなどの端末を見ることは、寝つきを悪くするだけでなく、翌日の眠気や警戒心に影響を与えます。また、イェール大学の研究グループによると、インターネットで検索をすると”検索した”という事実の影響が強く、結果を得られていなくても賢くなったように錯覚してしまうという結果があるそうです。

クローズドSNS


 最近、家族や恋人・親友との絆を深いものにし、SNS疲れを癒すものとして「クローズドSNS」というものが注目を集めています。従来のオープンなSNSとは違い、登録できる友達数の制限や、恋人や家族などとだけつながりをもてることを特徴とするサービスです。次回の勉強会ではスマホによって発生している家族間コミュニケーションの問題を、スマホアプリを以て解決する取り組みを行っていらっしゃる谷生芳彦氏をお呼びして、お話を伺います。

 

 今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。

次回は5月1日、谷生芳彦氏をお迎えして、ご講義いただきます。

 

                                                                                                                                                                                                               文責 杉本知穂