2014年度 第3回事前学習

経済発展と環境問題


 6月20日、日吉キャンパスにて第3回事前学習が行われました。これから3週間かけて学ぶテーマは「経済発展と環境問題」です。「経済発展と環境問題」について、日本はこれからどうあるべきかを考えました。


 今回は、2年生の岸本と宮村によるファシリテーション形式で「経済発展と環境問題」について学びました。以下はその内容です。

 

森林破壊


 数ある環境問題の中のひとつとして、まず森林破壊が取り上げられました。現在、世界レベルで急激に森林が減少していることが問題となっています。では、なぜ森林がなくなると困るのでしょうか?その答えとして、森林の果たす大切な役割3つが挙げられました。

 

1.生態系の変化

森は生命の根幹。多くの生物を養い、生物は食物連鎖によって共生しています。

2.土壌の根幹

森林は土壌に広大な根を張り、土壌のダムのような働きを行ってくれています。

3.空気の浄化

木は我々の生きる源である酸素を排出してくれています。

 

 この3つの役割を果たしている森林が無くなることは、地球システムの崩壊に繋がりかねません。深刻な森林伐採と乾燥地帯の増加が急速に進んでおり、1分間にサッカーコート20面分が無くなっているのが現状です。植林などの地道な努力により森林数が増えている日本のような国もあります。しかし世界規模で見れば、宅地や農業地開拓のための森林伐採や、木材を原料とする紙や包装などが過剰に利用されている現実は解決されないまま依然として存在しており、このままでは世界の森林数は減少する一方です。


水質汚染


 かつては工場や事業場の排水が主な原因であった水質汚染。しかし現在の水質汚染は6割が家庭から排出される生活排水によるものだといいます。また、水質汚染だけでなく、世界的な水不足も問題になっています。欧米や日本などの先進国が膨大な量を消費している一方(一人1日300L)、世界では約7億人が水不足の状態で、毎日4900人の子供が水不足で死亡しているのです。一見地球には豊富な水があるように見えますが、なぜ深刻な水不足が起きているのでしょうか。


 それは、人間が使える水は、地球上にあるすべての水のわずか0.01%しか無いからです。ゆえに水不足の地域が出来てしまうのです。今、水不足を解決するための行動をとらなければ2025年には世界人口の3分の2が水不足に苦しむことになると言われています。


生物種の絶滅


 現在、なんと毎日300種の生物が絶滅しています。年間では、毎年5万~15万の動物が絶滅しています。どんな生き物が絶滅しかけているか、という質問には

「リョコウバト」「マグロ」「二ホンオオカミ」「トキ」「ウナギ」…

など続々メンバーから声が上がりました。皆、生物種の絶滅への危機感は感じながらもどうにもできないのが悩ましいようです。

 

 地球の46億年の歴史上これまでには5回絶滅期が起きていて、今が最大の絶滅期だと言われています。これにはかなりのメンバーが驚きを隠せませんでした。現在が「最大」の絶滅期と呼ばれる背景には、今進行している絶滅が「根こそぎ」の絶滅でることに所以があるといいます。狩猟や乱獲による特定種の絶滅ではなく、森林伐採や河川の汚染や乱開発により、生態系が「根こそぎ」に破壊されてしまっているため「大」絶滅期だと言われているのです。


 生物種の絶滅は、普段私達が生活する中では比較的気がつきにくい環境問題であるといえます。しかし、気がつきにくいからといって重要性が低い問題というわけではありません。クマノミはイソギンチャクと、ワニチドリはワニと共生するように、生物は互いに支えあって生きています。それゆえ、ある一種の生物の絶滅が引き金になって、ドミノ倒しのように人類を含む生物の全滅につながる可能性もあるのです。


ゴミ問題


 ゴミは私達にとってありふれた身近なものですが、燃やすとダイオキシン、埋めると土壌を汚染する危険なものなのです。そしてなんと日本はゴミの焼却炉の数が世界ではダントツで一位、また、個人で年間に1キロもゴミを出してしまっているのです。現在ゴミを減らす取り組みとして個人単位でできる活動として提唱されている10Rが紹介されました。

 

ゴミを失くす10R

1   Reduce(減らす)

2   Reuse(再使用する)

3   Recycle(リサイクルする)

4   Responsibility(責任を持つ)

5   Refuse(止める)

6   Repair(直す)

7   Reform(改良する)

8   Rule(ルールを守る)

9   Relax(リラックスする)

10 Rental(借りる)

 

 企業としては、デポジット制が導入されています。ドイツでは企業による缶の回収が義務付けられています。例えばレッドブルの缶には、回収した缶がレッドブルだと明確に分かるようにプルタブに雄牛のマークがついています。


 ゴミ問題は私達が考える以上に深刻です。「人類は資源の枯渇によって滅びることはないだろうが、ゴミに埋まって滅びるのではないだろうか。」という米国経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉も、あながち荒唐無稽な話ではないのかもしれません。

大気汚染


 産業革命以降、大量に使用された石炭や石油などの化石燃料は二酸化炭素を大量に排出し多くの人の健康に影響を与えました。時代が進み経済が拡大するにつれ、工場で使用される燃料や薬品の種類も増え、排出される煤煙の量は急増しています。大気汚染の具体例として、以下の二つが挙げられました。

 

スモッグ

スモッグという言葉の語源は「フォグ」と「スモーク」で、イギリスの「ロンドン・スモッグ事件という」実際に起きた環境にまつわる事件が由来になっているそうです。

 

酸性雨

固いブロンズ像や屋根の塗料を溶かしてしまうほどの酸性雨。それを浴びた人間は一体どうなってしまうのでしょう。

酸性雨と大気汚染は深く関連しており、悪循環をもたらしています。

 

 国連も主張しているようにきれいな空気は人権の範疇にあります。それにもかかわらず、その空気を汚す行動を人間が行っているという矛盾を私達は解決できないままでいます。


地球温暖化


 近年、季節を問わず気温が上昇し続けており、IPCCの報告によると今後100年で最大6.4度の気温上昇が予想されているそうです。それに伴い海面上昇も問題視されています。なんと海面上昇によって消えてしまいそうな国もあるのです。「ツバル」というきれいな島の建物は、このまま地球温暖化に付随する海面上昇が続けば海につかってしまっています。

 

原因

温室効果ガスであると言われています。地球が太陽の熱によって熱くなりすぎないように熱を逃がしてくれているはたらきが、温室効果ガスによって邪魔されてしまうのです。

 

対策

私達にできる対策は、原因を常に考えることではないでしょうか。温室効果ガスを出しているのは何も工場だけではありません。家庭で使っている電気やガス、マイカーで消費するガソリンなども、大量に二酸化炭素を排出しています。自分たちの便利な生活が温暖化の一因にあることを自覚しなければいけません。

 

 目に見えるものに注目は集まりがちですが、実は環境問題はどれも深刻化していて、早急に解決しなければならない時に来ています。ひとりひとりの責任意識が問われていると言い換えてよいでしょう、すべての環境問題の共通の原因は人間の経済活動に依る点なのです。では、経済を縮小すればいいのでしょうか。しかしそうすると環境問題のために経済が停滞することになります。非常に難しい問題なのです。


経済発展か環境保護か


 経済活動の拡大と地球環境の保護はトレードオフの関係にあるならば、皆さんはどちらをとるか、という質問には次のような意見がありました。

 

環境保護派

・日本の景観を守りたい

・今まで経済活動を支持してきた結果が今なのだからこれからは環境保護に徹すべき

経済発展派

・経済活動の拡大は人間の欲求

・経済活動が拡大し技術も進歩すれば、環境と経済を両立できる技術が生まれる

 

 経済活動を拡大してきた中で、私たちは何を得てきたのでしょう。例としては、冷蔵庫、テレビ、電話、車などが挙げられます。車は先進国の象徴で、モータリゼーションという造語もあるほどです。都心に住んでいると車を使っていないような気がしますが、たとえばAmazonで物を買って、家まで届けてくれるのは何でしょうか。他でもない車です。車は、今や私たちが生きていくうえで必須なものとなっているのです。


 しかし、車は環境破壊の原因の中心となっています。その一方で近年、車が環境に悪いというイメージを覆すような車が生まれています。プリウスなどの電気自動車やテラモーターズのような電気バイクです。その他にも電車など環境に配慮した交通機関を使うことで、私達は環境に配慮した生活を送ることができます。これも、地球環境と経済が両立できるための「第三の答え」なのかもしれません。一つ一つ探していくことが大切なのではないでしょうか。


総括


 地球上の生態系は互いに支えあって生きています。そして、環境問題も互いに深く密接しています。「環境問題」と聞くと、世界のどこかで行われている出来事のように感じてしまいますが、人間も環境の一部だということを忘れてはいけません。

 

 極論を言えば環境を維持「しなければいけない」というわけではないと思います。しかし、地球は人類の家であり、自分たちが住みやすくあるためにも定期的に掃除が必要なのではないでしょうか。一見相対するように見える地球環境と経済活動。

両者をつなぐ第三の答えを模索しながら、素敵なエコライフを送りましょう!


 今回の事前学習で学んだことをもとに、「勉強会」「リフレクション」を通じて、さらにこのテーマについて理解を深めていきます。

そして次回は6月27日、株式会社セグウェイ代表取締役の大塚寛氏をお迎えして、ご講義いただきます。

 

文責:鎌田明里