2014年度 第10回リフレクション

HOW論


 今回の春合宿では、地方創生をテーマとしてディベートを実施しました。矢部班、田中班においては、地域格差の是正のHOW論を巡るディベートが行われました。

 

立論


矢部班:地方における人口流出と経済停滞の解決策として「IT特区」の設置を提案する。場所を選ばず働けるIT業界の利点に着目し、現在都内や関東近郊にあるIT関連企業、工場の地方への誘致を行う。

 

田中班:地方における教育や雇用の相対的な格差を是正し、東京を中心とする都市部への人口流出に歯止めをかけ、地方経済を活性化させるために「文化・芸術を生かした創造都市を形成する」プランを提案する。

尋問


 田中班から矢部班に対して以下の尋問がなされた。

1 IT関連企業をどのように定義しているか。

2沖縄との事業との違いを教えてほしい

3オフィス誘致先の空き家としては、どのようなものを想定しているのか。

 

 それに対して、矢部班は以下のように回答した。

1電子機器に携わる企業一般を指す。

2違いは考えていない。その成功例を参考に、今回提案するIT特区を実施したい。

3具体的には特定はしていない。

 

 次に矢部班から田中班に対して以下の尋問がなされた。

1教育を求めたりすることによる転出とは大学進学のことか。

2地方の労働環境は悪いのか。

 それに対して、田中班は以下のように回答した。

1その通りである。

2地方は都市と比べて賃金が低い。

反駁


第一反駁

田中班:ITはそもそも仕事に必要な人手を減らすものであるのに、雇用の増加策としてIT特区を設ける点に疑問を感じる。

 

矢部班:芸術祭の開催に伴い、雇用が増えるとされているが、それは芸術祭が成功することを前提としている。過去の事例において、金沢が成功しているという理由のみで、同様の芸術祭が必ずしも成功するとは考えられない。実際、金沢は昔から芸術が盛んな土地柄であったことが、芸術祭成功の大きな理由になったのである。また、芸術祭を開催することにより、観光者数はたしかに増えるかもしれないが、その土地に住み着く人が増えるとは考えられない。

 

第二反駁

 

田中班:伝統工芸がない地域に現代美術館を建設し、成功する可能性は十分あると考えられる。さらに、地域ブランドを確立することによって、人口は確実に増える。長野県にはその事例が存在するのである。

 

矢部班:昔ながらの伝統工芸品とは関係のない、現代美術館が成功した石川県の事例を用い、新たに現代美術館を作り、それが成功する可能性は十分高いというが、そもそもそれでは地方の個性を無いものにしてしまっているのではないか。

自由議論


田中班:芸術祭は地域性を考慮したものであるから、地域性は非常に重要視されるのである。またIT企業は比較的短命なものが多く、一時的な雇用が生まれたとしても、それは永続的なものではない。

 

矢部班:芸術祭は地域性が重視されるというが、それでは先ほどの発言と矛盾が生じる。つまり、芸術祭を実施するためには、その地域にオリジナリティがあることが必須条件になるのではないか。また芸術祭の場合においても、雇用は一時的なものになり、永続的なものではないのではないか。短期的な雇用に陥ってしまう恐れは、互いの班に共通するものである。

 

最終弁論


矢部班:地方に対する「IT特区の設置」は即効性があり、すぐに雇用の創出につながる。また、過去の事例において成功した例があるため、それが成功する可能性は極めて高い。田中班の立論と比べ、より多くの人が地方に集まり、その人々がその地域に留まる可能性が十分にある。

 

田中班:地域ブランドを確立することにより、その地域の魅力をかき立て、都市部からの人口流入が大いに期待できる。矢部班は「IT特区の設置」による一種の強制的な人口流入を期待しているが、私たちの班は地域の魅力によって人々を引き寄せようとしているのである。

 

所感


 両班とも非常にオリジナリティが溢れる立論であり、オーディエンス側としてはとても興味をかき立てられた。さらに田中班の立論に関しては、緻密な現状分析がなされており、論理的に政策を提案できていたという印象を受けた。また、両班とも政策自体は非常に趣向が凝られていたと感じため、今後は審判に対するアピール方法を向上させていくと、よりよいディベートになるのではないかと感じた。

 

文責 南部久翔