2015年度 第3回リフレクション

ヒトゲノムの解読と人間の理解


 今回は事前学習や映画鑑賞を通して学習してきた「ヒトゲノムの解読と人間の理解」というテーマの集大成として、ディベートを行いました。

 近年は遺伝子技術の発達により、容易に寿命・性格等の個人の特性について分析できるようになってきました。もし将来、遺伝子データのみで、ヒトを判断する時代になったとしたら、どのような利益・損失が生まれるでしょうか。

 

論題

「婚姻関係を結ぼうとする相手が早期アルツハイマー型認知症の危険因子の遺伝子を保有していると判明したとき、結婚するのか、しないのか」

 

 班を結婚する側と、結婚しない側に分け、ディベートを行いました。以下にそれぞれの立場の立論を掲載します。

結婚する側


・早期アルツハイマー型認知症の進行を抑える治療薬は、多数開発・使用されている、また、認知症の治療による経済的負担に対して、国からの補助金が保障されている。これらのことから発症後の経済的負担は最大限抑えることができる。


・早期アルツハイマー型認知症のメカニズムについては、未だ完全には解明されていないため、将来において治療法が見つけられる等の期待ができる。また、一度下した結婚するという判断を、安易に覆すべきではない。これらのことから確率という数字だけで結婚の判断を変えるべきではない。


・20~30代では好きな人と一緒にいたいと思う人が多いこと、婚期を逃すと好きな人と巡り合えない可能性があること等から、病気になる可能性があっても、自分が好きだと思った人と結婚するべきである。


・結婚は好きになった人とするべきことであり、発症後も介護をし続ける決心があれば、認知症になる可能性が高くても愛し続けることができる。

 

結婚しない側


・病気を発症後、パートナーの一方は相手を介護することになるが、身心的負担を考えた場合、十分に幸せな結婚生活が送れない可能性がある。一時の感情だけで、その後の生活を介護に費やすのは、お互いにとって幸せではない。


・介護においては経済的負担も考えられる。病気が発症した場合、共働きの家庭では収入が半分になる。また、それに加えて医療費もかかるため、生活は厳しい水準になってしまう。


・アルツハイマー型認知症は物忘れが多くなる病気のため、発症すると、それまでの結婚生活をすべて忘れてしまい、二人の思い出の共有ができなくなる。さらに、性格や言動など人間性までもが変わってしまうため、結婚を決めた頃の相手とは全く異なる人になってしまう。

所感


 今回は、高度な遺伝子技術と、それを利用する人間との関係性についてのテーマを扱いました。近年はiPS細胞等で再生医療への関心が高まる中、生命に関する研究が注目を集めています。そして、その中の一つである遺伝子技術について、社会との関わり方をどうするべきかを考えられたことはとても新鮮でした。私は現在、生命を情報・ITを使って学ぶ学科に通っていますが、生命について理工学的に学ぶことが多く、社会との関係や倫理について考える機会があまりありませんでした。

 生命情報と社会が抱える問題は他にも、ES細胞の作成における問題や出生前診断の是非など様々あります。今回のテーマ以外にも、科学に対して社会はどうあるべきかについて、今後も考えていきたいと感じました。

 

 

文責 小杉啓太