第1回特別学習企画

コンセンサスゲーム


 6月30日、日吉キャンパスにて第3回定例会テーマ「日本の平和主義のこれから 〜憲法第9条と平和の行方〜」に関連し、特別学習企画を行いました。2つのコンセンサスゲームを行い、自分の意見を伝えることに加え、班員と話し合うことで合意点を模索することを目的としました。

企画趣旨


 第3回定例会テーマ「日本の平和主義のこれから 〜憲法第9条と平和の行方〜」に関連し、価値観の異なる他者と意見を交換し、全員を合意へと導く力について考えます。 

 国際関係や日常生活において平和でない状況とは、国家や人々の意見が対立している時です。その状況下では、それぞれが自らの意見が正しいと考え、その意見に固執していることが多いと考えられます。そこでより平和な状況へと導くためには、お互いの意見を尊重し、誰もが納得するような合意点を模索することが重要です。今回の特別学習企画においては、自分の意見を相手に伝えることだけでなく、相手の主張を受け入れることの重要性を認識することを目的とします。

企画概要


 6人ずつ班を作り、個人で問題を解いた後、班毎に話し合いにより統一の解答を決定します。個人の解答と班の解答について、各々得点を求め、どのくらい得点に差があるかを確認しました。

1.砂漠ゲーム


【問題】

 みなさんが乗った小型飛行機は、アメリカ合衆国南西部にある砂漠の中に不時着しました。不時着した際、飛行機は大破炎上、操縦士と副操縦士は焼死しましたが、みなさんは奇跡的に大きな怪我もなく無事でした。不時着はあまりに突然で、無線で救援や現在位置を知らせる時間はありませんでした。しかし、飛行プランに示されているコースから約100km離れた所にいて、最も近くの居住地は約110km南南西にあることだけわかっています。この付近は全く平坦で、サボテンが生えている他は不毛の地域で、地表に近い足もとでは50℃にもなると予想されます。みなさんは軽装でハンカチとサングラス、小銭があるのみです。ただ飛行機が燃えてしまう前に、みなさんは次の6のアイテムをかろうじて取り出すことができました。「まずは、どれが重要なアイテムなのかを見極めよう」あるメンバーが言いました。「冷静に判断するため、まずは各自で考え、最後は全員で話しあおう。」

6アイテムの中で必要なものから重要度の高い順に1番から6番までの順位をつけなさい。(最も優先度が高いものが1となります)

 

・懐中電灯(乾電池が4つ入ってる)・1人につき1リットルの水・磁石の羅針盤・1人1着の軽装コート・弾薬の装填されている45口径のピストル・化粧用の鏡

【模範解答】

1位 化粧用の鏡(太陽の光を反射させて自分たちがいる位置を飛行船等に伝えるため)

2位 1人1着の軽装コート(日中は太陽光を遮り、夜間は寒さを凌ぐため)

3位  1人につき1リットルの水(生命存続のため)

4位 懐中電灯(乾電池が4つ入ってる)(夜間に光を照らし、飛行船等に自分たち位置を伝えるため)

5位 弾薬の装填されている45口径のピストル(音で自分たちの位置を伝えるため。ただし光の速度より音の速度は遅いため、優先順位は低い)

6位  磁石の羅針盤(方位を知ることは他の5つのアイテムの優先順位に比べ低いため)

 1~3位の順番に苦戦した班が多く、助けを呼ぶために自分の位置を外部へ知らせることと、生命存続のどちらを優先するかが頭を悩ませていました。半数以上の班が、個人の回答より班での回答の方が模範解答に近い回答を導き出せていました。班内でお互いの回答根拠について議論し、最終的に班員全員が合意できる回答を導くことが模範解答に近づく鍵となりました。

2.NASAゲーム


【問題】

 あなた方は宇宙船に乗って月面に着陸しようとしている宇宙飛行士です。月面には母船が待っているのですが,機械の故障で母船から約200マイル(約320km)離れた所に不時着してしまいました。不時着時の衝撃で宇宙船はほとんど壊れ使用不能となりました。しかし、次の7アイテムは破損を免れて完全なまま残っていました。「まずは、重要なアイテムを見極めよう」ある宇宙飛行士が言いました。「冷静に判断するため、まずは各自で考え、最後は全員で話しあおう。」

母船に無事たどりつくため、7アイテムの中で必要なものから重要度の高い順に1番から7番までの順位をつけなさい。(最も優先度が高いものが1となります)

 

・ナイロン製ロープ(15m)・酸素ボンベ45kg(2本)・月からみた星座表・救命いかだ(救命ボート)・水(19リットル)・磁気コンパス・ソーラー発電式FM送受信機

【模範解答】

1位 酸素ボンベ45kg(2本)(生命存続のため)

2位 水(19リットル)(生命存続のため。ただし、酸素に比べ優先順位は低い)

3位 月からみた星座表(自らの位置を把握するため)

4位 ソーラー発電式FM送受信機(自らの位置情報を外部へ伝えるため)

5位 ナイロン製ロープ(15m)(負傷者を縛る、坂道やでこぼこした地面を歩くために有用であるため)

6位 救命いかだ(救命ボート)(運搬や日除け、ガスを推進力にするため)

7位 磁気コンパス(磁場が弱いため優先順位は低い)

 地球とは異なる環境である月の特性についての知識、アイテムそれぞれをどのように活用するのか、が優先順位決定の判断材料になりました。NASAゲームは砂漠ゲームに比べ、班での回答が模範解答に近づいた班が多くみられました。一方で、個人の回答の方が模範解答に近かった、という班員もいました。班内でお互いの意見を尊重し、合意点を見出してから班員が納得できる回答を導くことの重要性を改めて感じました。

所感


 今回の特別学習企画では、特殊な状況下で生存するために必要なアイテムの順位を班ごとに考えました。個人の解答と班の解答を比較すると、班の解答の得点の方が向上したサークル員も多く、話し合いの重要性を改めて認識することがきました。また、話し合いにおいて、一人ひとりの意見が対立する場面もありましたが、協力することで合意形成の達成感を味わうことができました。日常生活において、他者と合意形成をする必要がある場合、自分の意見を主張することに加え、他者の意見を尊重することで、合意点を模索していきたいと思いました。

 

文責 岡根歩美