2014年度 第8回リフレクション

Which論 東京一極集中状態は是か非か


肯定側立論


 東京一極集中肯定派は、現在の東京一極集中状態・中央集権体制を維持すべきだと主張する根拠として、以下の三点を挙げた。


・ビジネスの充実

消費が局部的に拡大するため、企業の生産活動を刺激され、経済活動が活発になる。これは局部的に消費が拡大することによって、企業が集積し、効率的になることによって生じる。生産面においては技術や経験が集積することによって、効率的な生産活動が可能になる。一方、地方では無駄な労働の削減につながり、労働効率の向上につながる。また、企業が集まることにより、人材や技術が一点に集まる効果もある。


・都市圏でのインフラ整備の充実

2020年の東京五輪などを念頭に置いた、インフラ整備が計画されている。


・教育の充実

人材が集積することによって、教育機関の増加・教育の質の向上につながる。

 

肯定側反駁


・地方分権によって第2次・第3次産業も移転してしまった場合、地方に住んでいる人が第1次産業から離れてしまうのではないか


・農産物の輸出額は、2012年でも5000億円と目標の半分にも満たない値であるため、農業の輸出が経済に与える影響は少ないのではないか


・国の統一的教育プログラムを導入することによって、東京でも地方と同様の教育を受けさせることは可能


・地方に住みたいと思っている人が、第1次産業に就いてくれる可能性は少ない


・羽田アクセス線計画以外にも、首都高などで整備の計画がある


・倉庫の土地代など負担のコストは増えるが、そのコストに見合う利益が出てくる


・人が集まれば、出生率も上がる


・輸送力の強化によって、人口が増えても便利な生活ができる


・人口が減るからこそ、東京に一極集中させて経済を活性化させる


・鉄道や道路など全体的なインフラ整備が可能

否定側立論


 否定派は、現在の東京一極集中状態・中央集権体制に反対する根拠として、以下の三点を一極集中のデメリットとして挙げた。


・出生率の低下による人口減少の加速

出生率は大都市で低い傾向にあることから、大都市への人口流入はさらに深刻な人口減少を引き起こすと考えられる。


・リスクの一極集中

政治、経済の中心を一極集中化していることにより、有事の際のリスクも集中している。

 また、地方分権のメリットとして以下の3点を挙げた。


・出生率の上昇

子育てがしやすく出生率の高い地域に人が移り住むことによる出生率の向上が見込まれる。


・リスクの分散

首都直下型地震の際の死亡者数、経済被害を抑えることができる。


・第一次産業就業率の増加

農林水産業、食品製造業の経済全体に占める割合が高い地域の人口の増加は、第一次産業に就く人口も増加させる可能性がある。

否定側反駁


・消費が局部的に増加するとあるが、地方では減っているので日本全体では変わらないのではないか


・在庫管理がしやすくなるとあるが、倉庫の土地代など高いため、逆に負担が増えるのではないか。


・羽田空港のアクセス向上は人口の増加に結び付かない。


・子供の数も増えるため教員一人当たりの生徒数は変わらないのではないか


・東京と地方の間では教育格差はあまりないのではないか


・東京では子育てがしにくい環境であるため、人が集まるほど子供の数は減る


・第2次・第3次産業が移転したとしても、地域のコミュニティーが崩壊するとは考えて

いない


・地方のIT会社・ビジネス会社に就こうと思っている人が地方で就職できなかった場合、

第1次産業についてくれる可能性がある


・出生率の高い地方に人が移ることによって、子供の数を増やすことができる


・一極集中を避けることによって、災害時のリスクを避けることができる

所感


 私はこのディベートを聞くまで、東京一極集中は避けるべきという意見でした。しかし、このディベートを聞き、違う立場の意見を聞くことができ、自分の考えがより深まったように感じました。

 また、ディベート後にも「なぜあの論点で攻めなかったのか」などの講評があり、少しの論点の違いが最終的な結果に大きな影響を及ぼすのだと改めて感じました。

出生率が高いところに若年層の人が移り住めば、自然と子供の数は増えるとの考えがありますが、果たして本当にそうなのかと疑問を抱きました。また、第一次産業の輸出額である5000億円という額は、地方にとってどの程度の存在なのかが気になりました。このようにディベートを聞く中で、様々な疑問や考えが浮かんできて、そのことについて調べたり答えを出したりすることによって、自発的に問題を考えることにつながると実感しました。「ある問題について他人事にしない姿勢をつくる」という、Front Runnerがリフレクションでディベートを行う理由に触れることができたのは非常に重要な経験だったと思いました。私自身ディベートは苦手で、好きではありませんが、人前で上手く話せるようになることを目標に、これからも取り組み続けていきたいと感じました。

 

文責 小杉啓太