2014年度 第9回リフレクション

HOW論


立論


 宮村班は現在の都市部における人口集中の原因を企業の東京一極集中及びに都市部と地方における教育格差によるものと指摘し、その解決策として「全国産業分散計画(仮称)」を提案しました。一極集中状態にある産業構造を地方中核都市に分割し、移転することがこの政策の狙いであり、その結果、雇用格差の是正、地方経済の成長、インフラ整備の進展、人口の流動化、周辺地域の発展、教育格差の是正につながるという立論でした。

 一方、上原班においては地方経済衰退の原因を、地方と都心における職業環境の差にあると指摘し、就職環境の劣悪さが地方出身者の都心への流出につながっていると述べました。そこで、地域企業支援プラットフォームの設立を提案し、地域で起業しようとする事業主に対し、経済的支援、創業支援を行い、新規事業主が起業しやすい魅力的な環境を地域ぐるみで作り出すことを目標としました。その結果、地域独自の産業の定着、地域の住みやすさの向上、被雇用者の地域永住の可能性の拡大という3つのメリットの発生と、それに伴う雇用の拡大を主張しました。

尋問


 宮村班から上原班には以下の尋問がなされました。

 1地方の定義とは。2新規事業が増えることで雇用が増えるが環境の劣悪さは変わらないのではないか。3プラットフォームは国が運営するのか、それとも地域が運営するのか。4会社を起業させるためには資金が必要だが、どのようにして安定的にそれを実行するのか。

 

 それに対し上原班は以下のように回答しました。

 1第一次産業が中心となっている地域。2業種の多様性が増えニーズにあったものを生産すれば環境も改善する。3国が作成し指針も国が与えるが、実際に運営を行うのは地域。4明確な回答無し

 

 上原班から宮村班においては以下のような尋問がなされました。

 1「全国産業分散計画」においては人口の自然増加は見込めないのではないか。2中小企業の労働者の所得は低いが、大企業を地方に分散させるという政策においては、中小企業の人は現状のままなのか。3国土の均衡ある発展とは全体としての均衡を指すのか。4東京における産業の分配はどの程度か。

 

 それに対し宮村班は以下のように回答しました。

 1人口の増加のみが今回のディベートのテーマと考える。2いらない中小企業は淘汰されるだけのことだ。3その通りである。4中核都市にある企業に意思表示させ出来る限り分配を行う。東京は政治の中心であればよい。

反駁


 次に、宮村班の立論に対し上原班から以下のような反駁が挙げられました。

 1企業は実際に地方に移るのか。また、移ることはリスキーではないか。2東京は地価が下がっており、横浜などのベットタウンから人が離れ始めているため、経済の活性化ほどの事例はベットタウンの形成では起こらないのではないか。3消滅可能性都市がなくなってしまうのではないか。

 

 宮村班は上原班による反駁に以下のように回答しました。

 1今ある機能をそのまま移すだけなので、リスキーでない。2都市の地価が下がれば、人は減ってしまうが、人が魅力を感じるベットタウンにすればよい。韓国のインチョンがその成功例である。3上原班の政策だと国の補助金を使うことになり、ベンチャーがつぶれた場合は、それこそ収益率が低いので、収益率を見越して物事を考える必要がある。

 

 上原班の立論に対し宮村班から以下のような反駁が挙げられました。

 1関係構築と人材の紹介という現在の自治体がなしえていないことを実現させることは可能か。2宮村班は現在うまくいっている企業を分散させる一方で、上原班はスタートアップのみに焦点を当てているが、スタートアップの産業生存率はわずか3%であり、生き残ることは可能か。3地域特有の住みやすさとは何か。

 

 上原班は宮村班による反駁に以下のように回答しました。

 1現状で出来ていない事柄も、国がきちんと取り組むことにより、自治体の運営を変えていく。2農業や風力発電など、地方が必要としている産業に参画でき、第一次産業に関連した雇用を生むことが出来る。3明確な回答無し。

 

自由議論


 これまでの議論をふまえ、宮村班と上原班の間で自由議論が行われました。

 宮村班:ただ資金をばらまくだけでは企業が集まらないため、アメリカを例に考えるならば、ロサンゼルスは映画産業、シアトルは金融業などのように産業を分散させることが重要である。国が資金を渡し、支持する形では縦割行政になってしまう。

 上原班:関係構築は地方自治体が苦手な分野ではあるが、消滅可能性都市にある第一次産業を考慮に入れ、国からの強い支援が必要である。

所感


 今回のディベートは宮村班の勝利となりました。しかし、どちらの班の主張も筋が通っており、一方の班の意見に偏った案を採ると、メリットと同時にデメリットも発生するため、難しいテーマだと痛感しました。宮村班の相手班の反駁に対する反論が、データや論理性を踏まえており、オーディエンス側として納得させられた面が大きかったと感じました。

 

文責 坂本真都里